Gulliverコメント|I元

体現帝国は●●だ

体現帝国を観始めたのは「白雪姫」から… 都合4公演プラス試演会シリーズ「無限劇の扉」数度を観た程度の帝国歴(笑)ですが、そこからでも他の演劇シーンと比較して浮かび上がる「体現帝国の特徴や傾向」というものは確かにある。

① 体現帝国はびっくり箱である
体現帝国の公演にはことごとく驚かされる。何なら上演前から驚いている(笑)
「白雪姫」では劇場に入ると全裸の女性が舞台上に座っていたし、「しっぽをつかまれた欲望」では客席を「目出し帽まで被った黒ずくめの女達」がキョンシーさながらに徘徊し…人ならざる雰囲気を醸していた。「Gulliver-不安の島-」野外公演ver.でも、目隠しをされて公園を引き摺りまわされたっけ。
他の劇団でも客入れ中から板付きで何かしている演出は稀ではないし、客入れからコントライブさながらに観客とコミュニケーションを取り続ける劇団わに社もいる。しかし体現帝国がそれらとも一線を画するのは、会場に入った瞬間から「観客をダイレクトに作品世界に惹き込もうとするインパクトの強さと余念の無さ」であり… 力づくと言っても良いぐらいの演出家の剛腕だ。無論、ソレが出オチに終わる筈もなく、上演が始まってからも… 延々と「作品が生み出す空気」に呑み込まれ続けることになる。
なお… 今度のホール公演に至っては、既に折込チラシの段階で驚いている。チラシの束に折り込まれていたソレは… 明らかにポスターサイズであった(笑) #デカい

② 体現帝国は絵画である
体現帝国は原作モノを題材にするのが常で、上演台本としての脚色・翻案はあるにしても、主宰 渡部剛己さんの依って立つところはやはり演出家。だからなのか… 何となく「言葉に頼らず、画作りで何かを伝えてくる感覚」が強く、それは一枚の絵画として目に映ることもしばしば。 俗にアングラ系と称されることの多い体現帝国ですが、身体表現を重んじる結果としての肉体美は… 独特の煽る様なポージングを成し、果ては煽情的なエロチシズムを醸し、演劇的な陰影の美しさも後押しして、極めて絵画的な画作りとなる。
その積み重ねの結果として、たとえ難しい言葉が連なるテキストで台詞に基づく理解が及ばなかったとしても、十分に舞台としての満足感を得られる作品として成立する。これは劇団の強みであり、作品の楽しみ方や解釈の余地も増やす… ひいては作品の深みにも繋がる大きな魅力だ。

③ 体現帝国はダークメルヘンである
作品の内容的にはベースが童話であることも多く… そのくせシニカルで風刺的な目線が色濃く、アングラ調がその空気を煽ってくる。結果として作品はダークメルヘンの佇まいになることが多い。選ぶ原作に根差す部分ではあるかもしれないけれど、その選択には明確にそういう傾向が窺えるので、世の中へのそういう眼差しが常に剛己さんの中にあるのだと思う。(Twitterフォローすると面白いよ。)
さて次作の原作…本来のガリヴァー旅行記も元々が「風刺」であることを踏まえれば、やはり本作も現代日本を見立てた風刺/翻案なのではないか…と野外ver.を観た時にも感じていて、野外に比べれば落ち着いて観られる筈の本公演で、そういう思索を巡らせられる「集中できる環境」が生み出されることも期待している。野外も良いけど、コロナ禍で増えた配信観劇を多く経験した結果も踏まえて、「強制集中装置」たる劇場の威力や魅力も改めて強く感じる様になった。体現帝国も今回の公演では「生」アピールが甚だしく、「生生生生生演劇」を標榜している。色んな意味で絶好の機会だと思います。
なお、ダークメルヘンと言うと名古屋では「星の女子さん」辺りが先達になると思うけど、 同じダークメルヘンでも両者ではだいぶん感触が異なる。星の女子さんはジワっと浸透してくるダークネス、体現帝国は怒濤の如く覆い被さってくるダークネスかな。調べたら両劇団の旗揚げは同年(2008年)らしく、奇縁を感じます。

さて… この寄稿文を書くにあたって、手始めに「体現帝国は○○だ」の体裁で特徴を切り出してあったのですが、まだまだ他にも以下の様なモノが残っています。
・体現帝国はエロい
・体現帝国にはタブーがない
・体現帝国は実験場だ
・体現帝国は意外にロジカルで硬派
・体現帝国は演劇人を育てる…何なら観客も育てる
・体現帝国は怖そうだが意外にフレンドリー
だがしかし…既に打診された目安の文字数の3倍!を超えてしまったので、この辺りで勘弁しといてやる(笑)
#我ながら何目線?
以上、この駄文を読んで、果たして本公演を観たくなる人がいるのかに責任は持てませんが(笑)、野外verとはまた全く違うステージを立ち上げてくること間違いなしなので、自分ではこれを書きながら純粋に期待が高まってしまいました。
頼むよ 剛己さん、”生”一丁ぅ (=゚ω゚)ノ
#生がたくさん味わえるらしいので笑笑

I元(観劇残留思念体)