Gulliverコメント|菊地敬一(ヴィレッジヴァンガード)

前衛の必要性

ジャズが好きで会社名にニューヨークのライブハウスの名前を使ってるくらいです。
喩えばサックスプレイヤーだと断然コルトレーンが好きだけど、尊敬するのはアルバート・アイラーとかオーネット・コールマンです。
好きとリスペクトは違う。
彼らは生まれながらの前衛坊やでふりむきもせず一心に前衛を志向したその勇敢さに心打たれます。
思えば苦しい道です。
前衛は既成秩序からの無理解という宿痾を抱えている。
ジャズでいえば第二次世界大戦が終わってからのビバップ運動は無理解と批判に晒されました。
音律がおかしい 雑音だ などと。
いまは?洒落た鮨屋でビバップジャズは普通のことのように鳴っている。
先行者の労苦は常に報われる。
前衛は自己否定と自己超克を促す力を持っている。
送り手にも受け手にも。
なので緊張の度合いは非前衛とは比べものにならない。
初期の成功に安住して自己のエピゴーネンを繰り返している送り手のなんと多いことよ。
ナカムラルビイという美少女はフィールドを前衛に置いている前衛お嬢です。
彼女の準主演した映画『温泉しかばね芸者』は、すこぶるつきの前衛でした。
今度の体現帝国と酢酸カーミンの融合に期待してます。
酢酸といえばかつてアシッドジャズというジャズジャンルがありました。
舞台にどんなギミックとメタファーが用意されてるのかいまから楽しみです。

菊地敬一(ヴィレッジヴァンガード)