授業 試演会コメント:波田野淳紘

 
夏の山奥の河畔だった。裸の男性が水遊びをしていた。遠目に見ても人好きのする笑顔で、陽光と風がむきだしのお尻をやわらかに包んでいた。
それが剛己さんだった。初めて会った時から、素手で人の心に触れてきた。こう書くと、粗野な野生児のような印象を与えるかもしれないが、それは違う。人とそらさずに向かいあう胆力と、壊れやすいものに静かに触れに行く繊細さが、彼のなかに同居していた。
作品を、作者の生をもって語るなどもってのほか。それはそうだけど、試演会の『授業』は、観客に力強く迫りながら、剛己さんの繊細な側面がよく立ち現れた舞台だった。これからの稽古を経て上演される『授業』が、演出の意図や言葉や企みを超えた、いっそうの大きな嵐を宿すことを期待しています。

波田野淳紘(820製作所主宰、劇作家、演出家)
http://820-haniwa.com