渡部剛己(わたべ ごうき)の演劇歴について
体現帝国の主宰、渡部剛己(わたべ ごうき)と出会って12年が経ちました。
当時から、変わらず、見た目は年齢不要で、奇抜な服装を好み、よく喋る青年でした。
そんな彼が12年で何があったのか、簡単にまとめてみました。
彼のことが気になるという方や、よく知らないという方に読んでいただけたら嬉しいです。
■劇団じゃこ入部
体現帝国の主宰、渡部剛己(わたべ ごうき)と初めて会ったのは2006年、名古屋造形芸術大学(現:名古屋造形大学)の講堂。
そこでは大学の演劇部「劇団じゃこ」が稽古をしていて、彼は先輩の紹介で演劇部の見学に来て、そのまま入部することになりました。
当時の彼は18歳で、美術や、デザイン、パフォーマンスに興味はありましたが、演劇にはほとんど興味がなかったらしいです。
中学・高校で演劇部に所属していた部員とは違った思考で演劇作品を見ていたので、彼が入部したことで「劇団じゃこ」に新しい風が吹いたように思いました。
■「体現帝国」爆誕!!
それから2年後の2008年5月、渡部は「劇団じゃこ」を辞め、自ら「体現帝国」を立ち上げます。
なぜ演劇部を辞めて自団体を立ち上げたのか、詳しい話はわからないのですが、彼が様々な演劇作品に触れる中で、寺山修司などのいわゆるアングラ演劇と呼ばれる世界に強く惹かれるようになり、そういった作品は大学の演劇部内でつくるのは難しかったからではないかと思います。(詳しくは本人に直接聞いてみてください、ノリノリで話してくれると思います。)
■1人だけの体現帝国
「体現帝国」は、渡部1人だけでのスタートでした。
同年7月大学内のギャラリー「スペースD」を会場に、第一回公演『ゲゲゲゲゲキ』、10月に第二回公演『修正』を上演。
出演を頼める役者もいなかったため、作・演出・出演・大道具・小道具など、ほぼ渡部一人でこなしていました。
展示用の真っ白なギャラリー空間は、演劇を上演するのに整った環境ではありませんでしたし、技術・経験も乏しい1人で作った作品でしたが、溢れるエネルギーと空間を生かした工夫で作品は好評を収めました。
ちなみに、体現帝国誕生の場所「スペースD」は老朽化のため現在は取り壊されています。
取り壊された後の何もない土地を見て、彼は静かに泣いたらしいです。
■体現帝国の4年間(愛知)
2008年12月の第三回公演『奥さんの坐薬』は客演の役者を迎え、商店街の施設の一室で上演を行いました。
お気づきの方もいると思いますが、初期の体現帝国は劇場(芝居小屋)ではない施設で上演を行っています。
現在もお寺の境内や路上など、劇場ではない空間で作品を上演することがありますが、体現帝国初期の逆境に負けないエネルギーや、空間を含めて作品を作っていく考え方が、現在の作品に生かされています。
その後は、路上実験演劇や企画公演への参加、試演会などでいくつかの小さな作品を上演。
また、渡部は体現帝国の活動の他に、名古屋市の大須にある芝居小屋「七ツ寺共同スタジオ」や、「三重県文化会館」のスタッフとして企画公演や運営に係わります。
様々な方や、作品との出会いの中で、技術や世界を広げていきました。
満を持して2010年3月に第四回公演『対』(会場:G/PIT)を上演。
劇団員は俳優3人が入り、4人体制となり、彼が1人の時と比べより良いクリエーションができるようになりました。
■無期限活動休止
2012年10月の第五回公演『女中たち』(会場:七ツ寺共同スタジオ)の上演を最後に、体現帝国の活動は無期限休止を発表します。
主な理由は、渡部が東京へ移住するためでした。
東京へ移住した彼は「演劇実験室◉万有引力」へ所属そこで約4年間活動し、様々な経験を積みました。
■利賀演劇人コンクール、そして「体現帝国」復活へ
東京の暮らしにも慣れた2016年、渡部は自身の演出の力を試すため、渡部剛己個人の名義で「利賀演劇人コンクール2016」へ挑戦します。
同年7月、上演した『班女』(会場:富山県利賀芸術公園 リフトシアター)で優秀演出家賞二席、観客賞2位を受賞しました。
その時、彼は作品を作り続ける上で「劇団」の大切さや、強さを痛感し、「体現帝国」の復活を決意したそうです。
そして、2017年「体現帝国」を再開!!!同年6月に第六回公演『授業』(会場:中野テルプシコール)を上演しました。
また、渡部個人は舞踏関連の海外ツアー公演に参加し、言葉に頼りすぎない世界中の人が楽しめる作品作りを、今まで以上に意識するようになったそうです。
■3都市ツアーへ
2018年、今回の第七回公演『白雪姫』が最新作となります。
現在の拠点「東京」、舞踏のワークショップなどでご縁のあった「秋田」、誕生の地「愛知」を回る、初のツアー公演です。
多彩な役者や、プロフェッショナルなスタッフに恵まれ、渡部剛己たった1人ではじめた劇団は、紆余曲折ありながら10年で大きく成長しました。
当時の溢れるエネルギーはそのままに、10年分の出会いや経験が、作品の可能性を大きく広げています。
作品は生き物です。当たり前ですが、その時の社会情勢や、メンバーで作品は変わっていきます。
この作品が、今の体現帝国の最高傑作です。
10年の歴史からどんな作品が出来上がるのか!??
ぜひ会場でご覧いただきたいと思います。
■来年のこと(おまけ)
体現帝国の来年の公演予定が1つ決まりました。
2019年9月25日「あいちトリエンナーレ2019舞台芸術公募プログラム」で上演をいたします。
もしかすると、来年はもっと有名な劇団になっているかも?
今後の体現帝国、および渡部剛己の活躍にもご注目いだければ幸いです。