白雪姫 試演会コメント:岡村洋次郎

 
体現帝国・試演会に立ち会って

最後に<影を喰う>というモチーフが印象に残る舞台だったが、試演会にありがちな犯罪的殺伐さも手伝ってか、苦しい程胸が痛んだ。

一度も体現帝国の舞台は観たことがないので、勝手な推測でしかないのだが、寺山修司が好きだという渡部剛己君の演出は、グリム童話「白雪姫」等の様々なシーンのブリコラージュから出来ているようだが、私は寺山は大嘘つきだと思っているので、寺山はどうでもいいのだが、体現帝国の舞台が、胸苦しい殺伐さに溢れかえる<リアル>な暴力的舞台に向かうのか、それとも殺伐さが解消され、熱い浪漫的狂気が具現されるのか、今の段階では予測出来ないが、この二つは似ていて全く違う舞台と云えて、前者は破壊的挑発的エナジーの持続に晒される舞台、後者は優しさに満ちた狂気と愛の坩堝と化す舞台が実現するだろう。
もっともその両方が混在する舞台も、こちらが期待することも出来るかも知れない。
ところで彼は、童話を具現化する力と、言葉の抽象化の力を知っている演出家かも知れない。
そして、ひとつ確実に言えることは、<中途半端が許されない舞台>であることは間違いないようだ。
本番までのあと一ヶ月、渡部君の地獄のような稽古とその怖ろしい日々を祈っています。
 

岡村洋次郎(阿彌 主宰)
http://www.tokyobabylon.org/gekidan_ami.html